東京高等裁判所 昭和63年(ネ)2850号 判決
本件記録によれば、控訴人が当審において新たな主張(被控訴人らには人事権行使とは別個の個人的不法行為による責任がある旨の主張)をするに至った経緯は次のとおりであると認められる。控訴人は、昭和六一年一二月二七日原審裁判所に対して本件訴えを提起し、原判決摘示の事実を主張していたところ、被控訴人らは原審裁判所に対し、昭和六二年五月一一日付求釈明書により、被控訴人時任、同宮腰に対する本件訴えは被控訴人らの違法な人事権行使とは別個の個人的不法行為を主張するものであるか否かについて控訴人に釈明を求めるよう申し立て、これを受けて、原審裁判所は控訴人の訴訟代理人に対し、右の点を含め、被控訴人らに対する主張の趣旨について釈明を求めた。右求釈明に対し、右訴訟代理人は、昭和六三年七月一日の原審口頭弁論期日において、被控訴人らに対する本件訴えは、被控訴人らの故意または重大な過失による違法な人事権行使に基づく請求であり、他に請求はしない旨、及び被控訴人時任、同宮腰については、就労拒否を含む違法な人事権行使に同被控訴人らが直接関与し、加担したと主張する趣旨である旨を釈明した。このため、当審で右の新たな主張が提出されるまでは、本件訴えは被控訴人らの違法な人事権行使を理由とするものとして審理されてきた。ところが、控訴人は、当審において右の釈明を翻し、右主張をするに至ったものである。
右の経緯に照らすと、控訴人の右主張は、控訴人の故意により時機に後れて提出されたものというべきである。そして、右主張について審理をする場合には、全く別個に新たな証拠調べをすることが必要になり、これがために訴訟が著しく遅延することは明らかである。
よって、民事訴訟法一三九条一項を適用して右主張はこれを却下することとする。
(枇杷田 喜多村 小林)